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[rèɪdioʊǽktɪv]

文=波田野直樹 イラスト=田添公基

ドアの向こうに朴正熙がいた(4)

4 帰還 翌朝九時すぎ。Y領事のアシスタントのKさんからの電話があった。生きているかどうかの確認だ。ああ、生きてるよ。 「元気です。外には誰もいないらしい。監視はいないと思います」と答える。 「よかったですね。でも気をつけてください」 「あした…

ドアの向こうに朴正熙がいた(3)

3 尾行 翌朝、目覚めたのは八時前だった。ぐっすりと眠ったらしい。気分は悪くなかった。じりじりしながら待ち、九時になると同時に主人に釜山の日本領事館に電話してもらった。日本領事館に電話することによって身の潔白を主人にわかってもらいたいという…

ドアの向こうに朴正熙がいた(2)

2 尋問 その後も質問は海の波のように引いては寄せてきた。恐らくこういった尋問の常套手段なのだろう、同じような質問がフーガのように繰り返される。 質問は何人かの男たちから発せられた。わたしはひとつひとつ丁寧に答えていった。特に恐怖はかんじなか…

ドアの向こうに朴正熙がいた(1)

プロローグ 二〇一三年二月、パク・クネ(朴槿恵)が大韓民国の第十八代大統領に就任したというニュースを聞いたとき、のちに文世光事件と呼ばれることになる大統領狙撃事件で射殺された母親のユク・ヨンス(陸英修)の葬儀に参列した彼女の姿を思い出した…

マスクの時代

亡くなった母親がかなり高齢になった頃、結核に罹って隔離された病棟で何ヶ月か過ごした。結核菌で汚染された隔離病棟の空気を健常者は吸ってはならないから、病院のスタッフや見舞いで訪れる人間は結核菌の通過を防ぐ特別なマスクを装着してから病棟に入る…

ブログタイトル解題

[rèɪdioʊǽktɪv]は「放射能の(ある)」を意味する英単語radioactiveの発音記号。用例はradioactive rays(放射線)、radioactive contamination(放射能汚染)、radioactive leakage(放射能漏れ)、radioactive aerosol(放射性微粒子)等。この時代に生きる者として…